カレー星人
カレーをぶちまけてしまった。
ある日のお昼のこと。
焼きチーズカレーを作るために私はプレートにカレーを盛り、その上から卵とチーズを乗せ、トースターで焼こうとしているところだった。
最高に美味しいものを作っているところだった。ルンルンしていた。
さあ、いざ焼こうと振り返った瞬間、腕が物に当たり、持っていたプレートごと床にぶちまけてしまった。
なんだろう、表しようのない絶望感。
これから食べるはずのカレーが割れたお皿と混ざって食べれない状態で床に散らばっている。
勢いで飛んだカレーの汁が棚の隙間に入り込んでいる。
私の大好きなチーズがとろける前に床に散らばっている。
バイトのためにズボンだけ着替えていたのにカレーがべっとりついている。
美味しいものを粗末にしてしまった罪悪感と、服が汚れたことによる嫌悪感から、
しばらく動くことができなかった。
ただ、床を眺めていた。
しかし、動かないと何も進まない。
カレーのシミはすぐに落とさないと取れないと思ったから真っ先に服を洗った。
そのとき、急いでいたから電気のスイッチにもカレーをつけた。
(後から見たらドライヤーにもカレーがついてた。)
自分がカレー星人にでもなったかのような気分だ。
服を洗剤につけ置いて、キッチンに戻った。
割れたお皿とカレーと、黄身が割れた卵。絶望をそこに表したような光景。
カレーが混じったご飯を拾う。
時々ガラスの破片が混じってる。これ絶対食べられないじゃん。
腕が当たっていなければ…
そのまま温めていたら…
本来であれば美味しく食べることのできたものは一瞬にして片付けが面倒なドロドロの液体に変わってしまった。
そんなことを考えながら片付けを終え、ごめんなさいと声に出して謝りながら捨てた。
人は失敗から学ぶ生き物だと聞いたことがある。
物が多い状態のキッチンで作業をするのはもう絶対にやめようと心に決めた。